『心眼』の松竹梅

  三遊亭圓朝の作である「心眼」は青空文庫で誰でも読むことができます。ありがたいことです。これは盲人であった圓朝の弟子(実弟?)の圓丸という人から聞いた話を圓朝が落語にしたらしいです。

 『心眼』は文楽師匠が有名ですが、圓朝の速記とは色々異なる点があります。人・時代によって落語は当然変わってきますが、私にはどうにも気になるところがありました。登場人物の名前が違うんです

圓朝の速記では針医の梅喜、妻のお竹、弟の松之助としてあります。しかし、文楽師匠は弟を金公と呼んでおります。色んな師匠が手掛けていくうちに、金公の方が良いだろうとなったのでしょうか。ただ金公では松竹梅になりません。

圓朝ほどの人が適当に名前を付けて、それがたまたま松竹梅になったとは考えにくいです。何かしら意図するところがあったのではないでしょうか。ではなぜ松竹梅を入れこんだのでしょう。

ここからは私の想像ですが『心眼』という噺は決して陽気な噺ではありません。目の不自由な方にとっては、気分を害されることがあるかもしれません。圓朝は少しでも陽気な要素を入れようとしたのではないでしょうか。目の不自由な方というよりも話を聞いた圓丸という人を気遣ったような気がします。

似たような噺で『景清』という噺がありますが、『景清』のように後味の良い噺ではない『心眼』に少しでも明るい雰囲気を入れようと松竹梅という名前を入れたのではないでしょうか。そこに落語中興の祖と言われる三遊亭圓朝の優しい人柄を感じます。

タイトルとURLをコピーしました